七月二十七日、ミミブラブメ
ふらりと立ち寄ったのがこの喫茶店。
こざっぱりとした店内は何か子供の頃を思い出させる趣を感じる。店の前で少し迷ったがその不思議な雰囲気に負けて私は店内へと足を踏み入れた。
緑の前掛けの店員が一人勘定台で暇そうに相撲中継を見ていたが、私を見ると笑顔で向かい入れてくれた。
まずは案内されるがままに席につくと、英語では無い謎の言語で私に喋りかけてきたのだ。何をいっているか到底検討もつかぬので適当に返事をしておくと嬉しそうに帰っていった。
しばらくすると黒い西米の上に黄色の舎里八のようなものーなにか南国に由来するのであろうか?ーが乗った飲み物が運ばれてきた。あゝなるほど、先ほど私はこれを注文したわけだな。
外は雲ひとつない晴天、ちょうど冷たい飲み物が欲しかった私は一気にこれを飲み干した。爽やかな酸味と甘み、そしての不思議な食感が混ざり合い、大胆な、それでいて気品のある一杯であった。
さぞかし厳しい修行を耐え抜いたのであろう、また暇そうに相撲を眺める店員へ敬意を込めて一弗の心づけを残してきた。
余談ではあるが、西米用の太い藁では最後に深い洋杯の底に残った液体を飲みにくいという人類有史以来の問題が未解決なのは非常に惜しい。ここの店には期待していただけに少し残念である。
また、席の側の壁には彼らの国に古くから伝わるという”フリ”が飾ってあった。”Do not touch”と文面通り受け取るのは無粋者のやることであって、彼らの文化に深く精通した者なら、これをあえて押すのだという。無粋者の私はそんなこととは知らずに何も押さずに帰ってきてしまった。なんと勿体無い。
まぁ次訪れる時に押せばいいさ、そう自分に言い聞かせ今宵は筆を置くこととする。
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